皇室典範では、皇位継承の順序において「直系」優先の原則
(天皇のお子様やお孫様などを天皇のご兄弟その他のお子様などより優先する)
を採用している。これは明治の皇室典範も現行の皇室典範も同じだ。この点について以下のような指摘がある(園部逸夫氏『皇室法概論』)。
「旧皇室制度については、明治の初めからその検討が始まり、
種々の調査や議論を経て、明治22年の旧皇室典範に至っている。
この間、皇位継承順序については、当時の資料をまとめた
研究である小林外『全集16・典範上』
(小林宏氏・島善高氏編著『日本立法資料全集16
明治皇室典範〔明治22年〕[上]』)及び同『全集17・典範下』
によれば…直系・長系(年長者の系統)を優先するという
基本的な考え方は、各種草案作成の過程で変化は見られない」「(現行の皇室典範を審議した)帝国議会では…
(直系などの)皇位継承順序が特別に論点となるようなことはなかった」皇室典範の制定に際して、“直系優先の原則”については、
全く異論が出ていない。「世襲」において、“親子”の間での継承を
基本とすべきことはごく自然であり、異論が出なくて
当たり前だろう(一方、「男系男子」限定に対しては、
女性・女系天皇を認める草案が元老院「日本国憲按」明治9年、
同「国憲草案」同13年、宮内省立案第1稿「皇室制規」
同19年などいくつもあり、戦後の現行皇室典範制定の際の
帝国議会でも、憲法学者で貴族院議員の佐々木惣一博士による
「女子に皇位継承の資格を認めても、万世一系と言うことと何等
〔なんら〕抵触することはない」という発言など、異論が多く出された)。しかも上皇・上皇后両陛下以来、天皇・皇后両陛下のお子様は、
ご誕生の時から両陛下とご一緒にお暮らしになる。
このことは、次代の天皇への最も望ましいご薫陶(くんとう)を
期待でき、直系継承の意義をさらに高める結果になった。なお時折、直系“優先”の意味を理解できない人が
いるように見えるのは、不思議だ。「もし天皇陛下にお子様がいらっしゃらなかったらどうするのか?
たちまち行き詰まってしまうではないか」などと、
真顔で発言したりする。直系優先と直系“絶対”の区別すらできないらしい
(そもそも直系絶対という無理なルール自体、考えにくいが)。
上記のような見当外れの妄言に対しては、
「皇室典範第2条に規定されたルールに従って継承順位を決めるだけ」
と応答するまで。現在は、天皇陛下のお子様が“いらっしゃる”ので、
その事実を前提として考えるべきなのは、言うまでもない。追記
7月26日、「The Tokyo Post」に拙稿が公開された。
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